それぞれの限界

リハビリ病院に転院して一月。

「いつまでここに居なくちゃならないの?」

前の病院で嫁さんが

「まぁ一月ほどででられるんじゃない?」

「二週にいっぺん帰ってきたら?」

と言われてたのでその心づもりだった。

が、退院への話はなく、話を切り出した。

「前の病院で言ったよね?俺もう退院したい」

嫁「まだ頑張って、もっと良くなるはずだし」

「いつまで?」

嫁「あと二ヶ月」

 

?なんか話かわってないか?

 

「いや、そんな長期、こんな病院で耐えられない」

「せめて二週にいっぺんは外泊連れて帰って欲しい。」

 

嫁「無理!仕事や子供らの事、あんたの保険の届けで手続きに走りまくって休む間も無いのに、これ以上無理言わんといて!」

嫁「ここに着替え取りに来たり、資格の試験もあるのに、出来ひんわ!」

ついに嫁さんの不満も限界から口に出た。

だけど私自身も心身の限界から

「あと1ヶ月で帰る!二ヶ月そこらでどうにもならんわ!自分でやってしまったけど、耐えられない!」

かなり憤りの声を上げてぶちまけた。

嫁「…わかった」

その日の午後、スマホが鳴った。

父からである。

父「お前、頑張らんか!嫁さん泣きながら電話してきたわ!お前の為を思ってくれてるのに、勝手に退院決めるな!」

これには驚きと怒りとが複雑になってロビーで電話口にブチ切れた

「アイツわざわざ告げ口までしたんか!もうええわ!離婚して勝手にでたる!もうどうでもええわ!」

父「アホな事抜かすな!お前のせいで」

電話を切った。

そりゃ苦労も迷惑もかけただろう。

今度は嫁さんから電話が来た。

嫁「お父さんから電話あったやろ?」

怒りのあまりに怒鳴りかけたが

「告げ口か?ご心配ありがとうございました」

「私は勝手に退院して野垂れ死にますね」

「探さんでええし、これでもう世話しにくる苦労も迷惑もかけへんな、ほな。」

嫁「…わかった。あと一月だけ頑張って。」

身勝手だとは解ってる、だけどもう限界なんだ。

 

翌日嫁さんが来て担当と面談、あと1ヶ月で退院が決まった。

感謝も何も言わず、帰る姿も見送らず、ベッドに戻る。

あと1ヶ月に決まったが、こんな形でむしゃくしゃするなぁ。

 

春までもう少し、退院したらゆっくりしよう。

そう思いながら外を眺めていた。

 

今夜はここまで、続きはまた。