進歩
窓際のベッドスペース、傍らに歩行器。
暇を見つけては自主リハビリに勤しむ。
この日、売店に行こうと思い、看護師さんに伝えてから歩き出す。
「〇〇さん、付き添いしましょうか?」
久しぶりにエレベーターも使って3階から1階の売店へ行くのでお願いしようとしたら、丁度嫁さんが着替えを持ってきてくれて付き添って貰った。
「エレベーター、動いた時に気圧の変化みたいなのが影響しなければいいな」
柔らかい陽射しが窓から入る通路、エレベーターに自分の脚で乗る。
心配していた身体への影響も無く、1階へ着き売店へ。
コーヒーを買う。
さて、小銭が上手く出せない。
店員さんに取ってもらってコーヒーを渡されるのだが、歩行器で歩くのも必死なのに、コーヒー持ちながら歩くのはかなり難しそう。
結局近くの椅子まで持ってきてもらい、座って飲む。
2ヶ月以上ぶりに味わうコーヒー、つい最近まで腕の自重ですら口に持って行けなかった、利き手の右腕は上がらないが、左腕でコップを口に寄せる。
「あー、うまい」
転院以来のロビー、ストレッチャーでは無く、椅子に座っている。
コップを横に置く、手を離す時、気をつけなければならないのは手を離したつもりでも、指が曲がって離れないで倒してしまう。
30分程くつろいで部屋に戻る。
ベッドに横たわり、リクライニングを起こしてもらう。
左の太股にビニールのスマホ入れにゴムバンドを付けてもらったやつが巻かれる。
僅かだが、この状態ならスマホが操作できる。
Twitterへの文の投稿等は無理だったが、閲覧したり、ネットを少し。
ゲームは問題外。
雑誌は持ち上げられなくて、テーブルの上でめくるが1ページずつは無理で、大幅にめくる。
読めないページが多かった。
歩行器で同じフロアにある自販機で買い物したり、辛いが歩ける事が楽しくてとにかく歩きまくる。
歩行器にはバルーン、買い物カゴがぶら下がる。
「〇〇さん、杖で歩いてみませんか?」
リハビリ室でついに杖で歩く!
色んな杖が並べられ、腕に充てて使うタイプを両腕に持ち、ゆっくり動く。
手と足のリズムが難しいが、歩行器からも解放され、より自由を手に入れた。
窓際のベッドスペース、傍らには杖。
2016年も終わりに近い。
気はここまで、続きはまた。